ボードゲーム、教室に続々 昔は禁止、いま教材に
盤上のコマを動かしたりカードを引いたりして楽しむボードゲームの教育効果が注目されている。元々、学校に持ってきてはいけないものだったが、子どもの論理的思考力だけでなく、社会性を高める教材としても有用だとして、導入する学校が増えている。
埼玉県狭山市の西武学園文理小学校では、毎週土曜日の3時間目にボードゲームをする授業がある。
「総合的な学習の時間」にあたる「CA(Creative(クリエーティブ) Activity(アクティビティー))」。伝統文化や楽器演奏など約20の講座から選択できるが、その一つが3、4年生約20人が受講している「ストラテジーゲーム」だ。昨年9月の文化祭では、児童が来場者にルールを説明し、実際に体験できるコーナーを設けた。
同校は、ゲームを使った教育プログラム開発会社とともに、学校授業に合った独自のカリキュラムを作り、4年前に導入した。担当した川上健吾教諭(33)は「目的を達成するため、筋道を立てて考える力がつく。自分がどうやったかを、周りに伝えることも大切な勉強だ」と話す。
授業では、ただ楽しむだけでなく、全員で話し合う「振り返り」の時間を必ず設ける。「友達と競わせるのは逆効果。半年ほどで、論理的な考え方が自然に身についてくる」とその効果を感じているという。
カードのやりとりなどを通じて、コミュニケーション能力や社会性を身につけようとする教材もある。
東京都豊島区の教材開発会社「クリエーションアカデミー」は、心理療法の一つ「箱庭療法」で使う用具をつくってきた。2001年には、主に子どもへのカウンセリングで使う「サイコロジーゲーム」を発売。特定のマスに止まるとカードを引き、「あなたが一番怖いものは」などと書かれた質問に答えさせる。発達障害のある子どもなどが、考えを言葉にするきっかけづくりがねらいだ。
そんな同社が06年に販売したすごろく形式のゲームは、発売から約7年で全国の小中学校などに2種類約1万セットが納入される「人気商品」となった。
小学校低学年用の「なかよしチャレンジ」と高学年以上用の「フレンドシップアドベンチャー」。どちらもサイコロジーゲームと同様にコマを進めながら、質問カードの質問に答える。
「なかよし」は、朝、家を出て登校するところを振り出しに、帰宅するまでのコース。途中で引く質問カードは、「掃除をさぼる子がいる」「サッカーに『女子だから』入れてくれない」など身近なトラブルを想定し、どうしたらいいかを選んで答えてもらう。
千葉市立花見川第三小学校では、学習障害などのある児童の「通級指導教室」で約4年前からボードゲームを導入してきた。今関裕恵(やすえ)教諭は「ゲーム形式で進めやすく、質問の答えに選択肢があって子どもも考えやすい。感情をコントロールし、他人の気持ちを考えるトレーニングは、普通学級でも必要だ」と話す。
同社によると、最近は大学のゼミから「学生間のコミュニケーションに使いたい」といった問い合わせもあるという。
教材開発部長の横山将さん(45)は「カードを手渡すだけでも、コミュニケーションが生まれる。デジタルのゲームにない、本来の子どもの遊びを取り戻すことが、社会性を養う上で効果的だ」とみる。
朝日新聞デジタル
2014年1月11日15時33分
http://www.asahi.com/articles/ASG1C2PG9G1CUTIL002.html